ウイッカーマンの参考資料
ウイッカーマンの参考資料

「 ケルトの王子 ク・ホリンの大冒険 」

(映像化準備中のプロット(概要)です。この作品は、ケルト神話のク・ホリンの物語とはまったく別のものです。)

 

「 少年戦士ク・ホリン誕生編 

 

 悠久の国ケルティカ。神と妖精と人間が一緒に暮らす、神話の世界。

 ある日、影の国の女王スカアの住む島からほどなくの海岸に、ひとり男の子の赤ん坊が流れ着いた。
 獲物にありついたと騒ぐカラスたち。だが、なにかにおびえてさっとちらばった。 現れたのは人間と野犬のあいの子、獣人クランだった。 クランは、メイヴ女王軍配下の兵士。 メイヴ女王は、ケルティカ全土を征服する野望に燃えているコナハト国の女王である。

 上官から特命を受けてやって来たクランの目的は、赤ん坊の始末だった。 あわや、クランの餌食になろうかという寸前、突如現れた全身黒ずくめの女性の姿。 影の国の女王スカアである。 スカアは、手下のカラスたちが騒ぐのを知って、周辺の異変を気に留め、様子を見に来ていたのだった。

 かかわりのない赤ん坊だったが、メイヴをきらうスカアは、ほんの気まぐれから改心の術を使ってクランをやさしい親犬の姿に変えた。良心の芽生えたクは、メイヴの魔の手から赤ん坊を守るため、ホリンの館で密かに育てることした。

 それから数年、赤ん坊は人並みはずれた成長を遂げ、美少年になっていた。麗しの瞳、真っ黒な髪を持つ少年は、そのやさしい姿とはうらはらに、闘士あふれる戦士となっていた。超人的な力と勇気と知恵を発揮し始めた少年は、ク・ホリン(クランの猛犬)と呼ばれるようになっていた。

 

 やがてク・ホリンに旅立ちのときが来た。

 

 ホリンの地を離れて武者修行に旅立った少年だったが、メイヴの魔の手はすぐそこまでに迫っていた。メイヴは、黒ドルイド(黒魔術を使う悪の魔術師)の予言を聞いて、ク・ホリンが将来、自分の大きな障害になることを恐れていたのだった。邪魔者の芽は、小さいうちに摘み取らねばならないのだ。

 まちぶせされたク・ホリンは超人的な存在とはいえ、まだ子供。絶対絶命の窮地に追い込まれる。あわやと思われたとき、どこからか現れた不思議な少女に救われる。気を失った少年が眼を覚ますとそこは森の国だった。

 森でさまようク・ホリンは、人の叫び声を聞く。その直後、ウイッカーマンと呼ばれる巨大な人間の形をしたかごに襲われる。かごは黒ドルイドの操る魔力で動かされていて、森に住む森の民を捕らえてどこかにつれて行こうとしているのだった。

 ク・ホリンは、知恵を働かせてウイッカーマンを倒す。ウイッカーマンに捕らわれていた男を助け出すと、名をレーグと言い、森の民の戦士の一人だった。レーグは、ク・ホリンと親友になり、ク・ホリンを森の民のところへ案内した。

 

 メイヴ女王は、地上を形作る4つの国のうち、すでに火の国と空の国を掌握していた。残る地の国と海の国のうち、地の国は一部を残してほとんどを制圧していた。残っていたのは森の民の住む森の国や、レッドブランチ(赤枝の戦士軍)の守るアルスター、そして、スカアの影の国など、ごく一部だけだった。

 レッドブランチとの戦いが長引くなか、メイヴはレッドブランチとは一時停戦をし、戦いの矛先を森の国に向けようとしていた。前線部隊として派遣されたのが、ウイッカーマンを使う部隊だったのだ。

 森の民の住む村に対する、メイヴの侵略は激しさを増していた。そのさなか、レーグが連れてきたみなれない少年は、一部の村人の不信をかう。その先導役は、メイヴ軍のスパイ、村の裏切り者となっていた副村長だった。副村長は、メイヴ軍から、少年と村人が対立するよう、仕向けることを指示されていたのだ。

 村の団結がゆるぎはじめたのを見計らうように、ウイッカーマン軍団による一斉攻撃が開始された。激しい戦いの中で、ク・ホリンの内にねむる闘争心が爆発する。ウイッカーマン軍団は、ク・ホリンの活躍もあって、まさかの敗北を喫し、敗れ去った。

 村人の不信も解かれたかにみえたが、副村長の計略にはまったク・ホリンは、メイヴのスパイと疑われる立場に追い込まれ、ついに、ク・ホリンの味方はレーグだけになってしまった。

 村を出る決心をしたク・ホリンに、レーグはついて行くのだった。レーグはク・ホリンに仕える御者となり、この後2人は死ぬまで離れることのない無二の親友になった。

 ク・ホリンは、レーグのすすめと案内で、森の国のはずれに住む、知恵の木の民の住む村へ向かうのだった。

 

 メイヴは、ウイッカーマン軍が全滅したのを知って驚くが、ク・ホリンが村を離れたのを知ると、ときは今とばかり、空の軍団を使って森の攻撃を開始した。

 空中戦艦ギガントは、空中飛翔の術を持つ空の精の力を動力源とする、超大型戦略爆撃機である。

 ギガントに座乗するシルファクス将軍は、メイヴの信任厚い、空を任された将軍の一人だった。 メイヴは、手ごわい相手、海の国マナナーンの動きを封じるため、マナナーンに派遣していたシルファクス将軍を一時的に呼び戻し、森の国を攻撃させようと企てた。

 ギガントを使った戦いに敗れたことのないシルファクス将軍は、必勝の信念で森の国への攻撃を開始した。空からの攻撃になすすべもない森の国は、ついに壊滅してしまう。

 

 森で残ったのは、知恵の木の村だけになった。

 ここは、ドルイド(正義の魔術師)の収める村で、術によって、村の姿は隠されていた。

 ク・ホリンとレーグは、ドルイドと偶然に出会い、気に入られて村に招かれることになった。

 よそものの二人ではあったが、村人たちとはすぐに仲間になった。実は、知恵の木の村は、ドルイドの発する不思議な力が手繰り寄せた、これからのケルティカを担うであろう人材の集まる人種のるつぼのようなところだったのだ。

 つかの間の平和が訪れたかのように思われた矢先、森の国が全滅したことが伝わって来た。

 知恵の木の村もやがては、シルファクス将軍の攻撃をまぬがれなくなることは、明白だった。

 空からの攻撃にはなすすべもなく全滅した森の国と同じ運命をたどるのか。

 

 シルファクス将軍の軍団は、ドルイドの「村の姿を隠す術」を破るため、黒ドルイドを引きつれ、ついに知恵の木の村に現れた。

 術は破られ、村の姿はあからさまになった。雲を押しのけ現れたギガント。

 この状況下、落ち着きはらって配置につく知恵の木の民の姿にク・ホリンとレーグはあっけにとられる。

 ギガントが高度を下げ、旋回をはじめた。最後の旋回が終わると、猛烈な火炎弾の雨がふってくるのだ。

 すると、知恵の木の家屋が突然動き出し、地面にもぐり始めた。これまで家のあったところはぽっかりあいた穴となり、代わりにせりあがってきたのは、大型の弓を備えた高射砲だった。

 思わぬ展開に、驚くク・ホリンとレーグ。知恵の木の民は、空からの攻撃をすでに予知しており、地下にも住める空間をつくっていたのだ。

 空から見ていたシルファクス将軍も意外な展開に驚くが、そこは、百戦錬磨の将軍。すばやく反応し、弓の届かぬ高さまでギガントの高度を上げて、体制を整えた。

 さすがのドルイドも、弓の届かない高さに逃げられては打つ手はない。ギガントの攻撃は開始された。

 次々に降り注ぐ火炎弾。高射砲も次々に破壊されて行く。ドルイドたちも地下へ逃れる他なかった。地上に残り、様子を伺うク・ホリン。レーグは、ク・ホリンのそばを離れない。

 ドルイドたちの消えた様子をみて、勝利を確信したシルファクス将軍は、状況を確かめるためギガントの高度を下げた。

 その様子を見ていたク・ホリンは、何を思ったか脱兎のごとく飛び出し、散乱していた残骸の中から弓を集めると、残っていた高射砲に駆け上がり、レーグの手を借りながら、いくつもの弓をひとつにまとめて、何倍も飛ぶ弓を急造した。

 そうとは知らぬシルファクス将軍は、いつになく油断に陥り、高度を下げて来た。破壊された地上の施設を見て喜びに表情がほころんだ次の瞬間、地上の一点から、まっすぐに自分に向かってくる矢が、みるみる巨大になって迫ってくるのに気づいた。

 ときすでに遅し。矢は将軍を含めた司令部のある展望室の窓をつきやぶって侵入し、そこにいたものたちを蹴散らしながら、壁と屋根を突き破って貫いた。操縦系統に甚大な被害を受けたギガントは、黒煙に包まれながら漂うかのように飛び去った。

 ク・ホリンの活躍で、知恵の木村の民は救われたのだった。

 

「 ク・ホリン誕生編 おわり 」 

 

「 影の国の女王スカア編 第1部 」

 

 無敗の将シルファクス将軍は、ク・ホリンの活躍の前に敗れ去った。

 ドルイドの収める村、知恵の木の村にも、つかの間の平和が訪れた。

 ク・ホリンは、ドルイドの元で精神の修行を受けていたが、内なる本能に導かれるように、新たなる戦いの場を求めて知恵の木の村を旅立つ決心を固める。

 ドルイドは、自分の後継者となって知恵の木の村に残るようにとさとすが、ク・ホリンの気持ちに変わりはなかった。

 

 そうしたある日、ドルイドは森のはずれで不思議な少女に会う。かつて、絶体絶命の危機に陥ったク・ホリンを救った少女だった。ドルイドの千里眼は少女が実は黄泉の国(死神の国)の一族であることを見抜く。

 少女は、生まれた場所こそ違えど、ク・ホリンと同じ日、同じ時間に生まれていて、まるで双子の兄弟のような関係だった。

 しかし、少女は、死神の一族として、ク・ホリンを黄泉の国へ連れて行く使命を背負っていた。 期間は、人間界の時間でわずか10年の間に。しかも、10年を待たずして、少女の考えひとつでいつでも魂を取り出せるのだ。

 少女はこれまで、何度かク・ホリンを黄泉の国に連れて行こうかと考えたことがあった。

 だが、できなかった。少女は、自分の背負わされた宿命のつらさに一人涙することがあった。少女のどこかにク・ホリンに対する慕情が芽生えていたのだ。 

 ドルイドに正体を見抜かれ、素性を明かした少女は、ドルイドからその使命を捨てるように懇願されると、困惑した表情を残しながら、いずれともなく姿を消すのだった。

 

 ドルイドは、少女に会ったことをク・ホリンには伏せていた。そして、ク・ホリンの命を守る意味をこめて、なんとか知恵の木の村に残ることを薦めるのだった。

 「私の予知するところでは、お前は知恵の木の村に残って私から知恵を学べば、やがてエレキというものを発明し、人間社会を革新的に文明化する功績をあげることになる。

 もし、戦いを求めて旅立つならば、やがてその武術はきわまり、ケルティカで並ぶもののない、偉大な英雄になるだろう。ただし、その時間は思いのほか短く、はかなくも若くしてついえる命に国中の者が涙を流すことになるだろう」

 ク・ホリンは決然として答えた。

 「決めるのは俺だ。俺は旅立つ」

 

 ク・ホリンは、影の国のスカアのもとをたずね、武術を極めようと考えた。

 スカアは、ケルティカの英雄なら知らぬものはいない、ケルティカ一の武術の神様だった。真の英雄を目指す者なら、誰でもみなスカアの教えを求める。知恵の木の村の仲間から、そのことを聞いたク・ホリンに迷いはなかった。

 レーグはもちろんク・ホリンに続いた。知恵の木の仲間も数人2人について来た。

 なごりを惜しむドルイドたちとは別に、もう一人、影から一行を見送る少女の姿があった。 

 

 一行の旅は、想像を絶する苦しい旅になった。

 山越えの途中で寒さと飢えに襲われ、仲間の一人が失われた。

 仲間は、自分が死んだらその肉を食って進めと言い残して死んだ。

 魂が抜けると肉体は犬の姿になっていた。

 残った一行は、その肉を食べて窮地を脱した。

 だが、ク・ホリンにとって、そのことは後に災いを招くのだった。

 犬に育てられ、犬の名前を持つク・ホリンにとって、犬の肉を食することは共食いになるのだ。 後日、ク・ホリンは、今後2度と犬の肉を食べないというゲッシュ(誓い)を立てるが、そのために窮地に陥ることになる…… 。

 

 ともかく山越えは果たしたものの、苦しい旅は続いた。

 灼熱の砂漠でまた一人失われ、そして、どこまでも続く沼地で新たな危機に襲われる。

 沼地にたどり着いたときは、ク・ホリンとレーグともう一人の3人だけになっていた。

 突然、3人は底なし沼にはまり込んでしまう。

 レーグを抱え、ク・ホリンは仲間の体を踏み台にしてジャンプするが、着地の際レーグが離れてしまい、レーグが沼に飲み込まれそうになる。レーグを助けるため手を差し出すク・ホリン。

 だが、お互い精一杯体を伸ばしても手は届かずレーグは、沼に飲み込まれて行くのだった。

 この事態に、さすがのク・ホリンも動揺する。

 ドルイドの忠告を無視して、自信過剰にスカアの国を目指したことへの後悔に襲われる。

 そのとき、雲の間から一筋の光が差し込んだ。

 光の国の王、ルーが助けに現れたのだった。実はルーこそ、ク・ホリンの本当の父なのだ。

 ふと我に返ったク・ホリンは、すぐそばに長い木の枝があることに気づく。

 すぐさま手に取ると、たった今レーグの沈んだあたりの渦に向かって差し込んだ。

 すると、手ごたえがあった。ク・ホリンが枝を引き上げると、その先にレーグも一緒に上がってきた。

 レーグは救われたのだった。

 しかし、喜びもつかの間、気づいたとき、体を貸してくれたもう一人の仲間の姿はなかった。

 失われたのは、知恵の木の村でも、いろいろ助けてくれた、特に仲の良かった仲間だった。最後には自分を踏み台にするよう、ク・ホリンをうながし、ク・ホリンの身代わりになって死んだのだった。

 生き残った2人は、仲間の死を無駄にしないためにも、さらなる前進を誓うのだった。

 

 スカアは、影の国にある、断崖絶壁に囲まれた湾の真ん中にそびえる島に住んでいた。

 ようやくスカアの島の対岸にたどり着いた2人。そこには、スカアに武術を習おうと、全ケルティカから名だたる戦士たちが集まりキャンプをはっていた。

 それぞれに苦難の道を越えてやって来た、見るからに猛者ぞろいのなか、ク・ホリンとレーグは幼い少年にしか見えなかった。見慣れない若造2人の登場に、からかう者もいた。

 だが、反対にク・ホリンは、キャンプをはってのんびりすごしている者たちをあざけり返すのだった。

 スカアの島は眼と鼻の先であった。しかし、普段穏やかな海は、侵入者があると突然怒涛に荒れ狂い、逆立つ波間に侵入者を飲み込んでしまうのだった。

 島に渡る方法はひとつだけであった。島と対岸は、一本の長い板で結ばれていた。その板を渡るのだ。

 しかし、その板の幅は片足をようやく載せるだけでいっぱいになるほど狭かった。さらに、途中に支えがなかったので、突然大きくたわんで揺れだしたり、また、たとえ真ん中あたりまでたどり着くことができたとしても、大きくはじいてまっさかさまに荒海に投げ落としてしまうのだった。

 無理に板を渡ろうとして、これまで何人もの戦士が命を落としていた。

 結局、対岸に集まった者たちは、そこでキャンプをはって、島からスカアが教えに来てくれるのを待つしかなかった。

 それを聞いたク・ホリンは、笑った。

 「スカアに習いに来た者が、スカアに来てもらって習うだって?習いに来たのなら、自分から行くものだ」

 衆目の集まるなか、ク・ホリンは、板を渡ると宣言し、実行した。

 いったいどのようにして渡るのか?

 ク・ホリンは、ジャンプに自信があった。板からしばらく歩いて距離をとると、勢いをつけて助走し、思い切って地面をけった。ク・ホリンの体は、ちょうど板の半分の距離のところに着地したが、板は大きくしなってク・ホリンをもと居た対岸まで弾き返した。

 「なんだ、口だけじゃないか」

 悪口も出たが、板に挑戦して、無事に帰った者はいないことを皆知っていたので、失敗を笑う者はなく、ク・ホリンの次の行動に注目が集まった。

 ここで、ク・ホリンの知恵が発揮される。

 ク・ホリンは、自分のジャンプで板の半分まで飛べることを知ったので、平らな地面で同じようにジャンプをし、それ×2倍で、まず板の全長をはじき出した。次にレーグに手伝わせて、ジャンプして届くところから、残りの距離と同じくらいの長さの縄を用意した。その縄の片側の端に鍵型のいかりを付け、縄を何重かの輪にして束ねて担ぐと、これで準備が整ったのか、再び、板に挑むのだった。

 全員が固唾を呑んで見守る中、最初と同じように助走を付けて地面をけったク・ホリン。

 前回と同じように、ちょうど真ん中あたりに届くと、板はク・ホリンを大きく弾き飛ばした。

 その瞬間、縄の先に付けていたいかりをスカアの島に向かって投げつけると、いかりはスカアの島の岩肌のひとつにしっかり食いついた。

 手にした縄を握って離さなかったク・ホリンは、体を弾き飛ばした板の力を利用しながら、岩に食いついたいかりを支点にして、見事なバランスと力加減で弧を描くように宙を飛び、一瞬のうちにスカアの島に立つことに成功した。

 自分のことのように成功を喜び、気勢を上げる対岸の戦士たち。

 対岸の沸き立つ様子に笑みを漏らすク・ホリン。ふと、気配を感じて振り返ると、そこには、全身黒ずくめの背の高い女の姿があった。

 影の国の女王、武術の神、スカアだった。

 「この島は私の島。この島の地を侮辱でけがす者、この島の秩序を乱す者を私はゆるさない。しかし、お前はまだ少年ではないか。少年ごときが自分の力で私の前に現れるとは驚いたものだ」

 普通ならスカアに縛り首にされてもおかしくない状況だったが、逆にク・ホリンはスカアに気に入られたのだった。

 

「 影の国の女王スカア編 第1部 おわり 」

 

影の国の女王スカア・イメージ
影の国の女王スカア・イメージ

「 影の国の女王スカア編 第2部 」

 

 スカアは、ク・ホリンが島に住むことを特別に許した。

 そのため、ク・ホリンは、他の弟子たちの何倍も濃い修行をすることができた。

 スカアは、ク・ホリンにいつまでも島に居て欲しいと望むようになっていた。

 女しか住まわせなかった影の国の秩序に微妙な異変が起こり始めていた。

 

 その秩序の乱れを鋭く察知して、影の国の侵略を狙うものがいた。

 かつて、スカアの弟子の一人だったアマゾネス(女性戦士)のオイファだった。

 オイファは、スカアの手がけた中でも特に優秀な逸材で、弟子の中で最強とたたえられるほどだった。

 オイファの武術は、スカアと並ぶほどまでになったが、両雄並び立たずのたとえの通り、あるときスカアと対立して、影の国を追放されたのだった。

 そのとき以来、オイファは影の国の周辺に潜んで、仲間を集め、密かに影の国の征服を狙っていたのだった。

 しかし、オイファほどの力があっても、スカアの魔力のかかった影の国の防御はくずせなかった。

 そのスカアに乱れが生じているのだった。

 完璧だった影の国の防御は、ほころび始めていた。

 防御の一角が崩れたとき、ついに、オイファの軍団は、影の国への侵攻を開始した。

 スカアは、対岸にいた弟子たちを影の国に呼び寄せ、守りに付かせた。

 影の国は、スカア軍とオイファ軍の戦場となった。

 

 思いのほかオイファ軍は強かった。スカアが右腕とたよる名うてのアマゾネスたちも、次々倒れ、スカアは窮地に陥っていた。スカア自身も傷を受けていた。このような事態は、かつて経験したことがないほどだった。それにもかかわらず、スカアは、もっとも頼れる戦力であるはずのク・ホリンを戦場から遠ざけていた。

 「なぜ、俺を戦わせてくれないんだ」

 ク・ホリンの訴えを聞き流すスカア。

 スカアは、ク・ホリンに特別な思いを抱いていたのだ。

 「おまえは、私の後継者だ。すべての術を会得するまで、一切の戦いは許さない」

 この、スカアの中に芽生えた慕情こそ、窮地の原因なのだ。しかし、スカア自身、そのことには気づかなかった。オイファが自分を研究しての、思いのほかの善戦と考えていたのだ。

 

 戦いは続き、ク・ホリンの仲間たちも、次々と戦場に繰り出されていった。

 今や生き残りはわずかしかいなかった。

 ク・ホリンは、もう、じっとしていられなかった。傷が悪化し、身動きの取れなくなったスカアに止める力はもうなかった。レーグに御者を頼むと、覚えたばかりの戦車に乗って戦場へと向かうのであった。

 

 前線でク・ホリンはオイファとはじめて対面した。

 オイファはうわさ通りの美貌の女性戦士だった。

 眼前に現れたク・ホリンに、さすがのオイファも緊張が走った。

 オイファには、ク・ホリンがただものではないことがわかっていたのだ。

 これから、どちらかが倒されるまで続く、無情な戦いが繰り広げられるのか。

 しかし、ク・ホリンの言葉は意外だった。

 「和平しよう」

 戦況は、オイファ軍の勝利目前であった。とは言え、本当にスカアを打ち負かせるかどうかは、オイファにも自信はなかった。

 「考える時間が欲しい。明日また話をしよう」

 オイファは、ク・ホリンの提案を受けて、停戦したのだった。

 その後、何度となく、ク・ホリンとオイファは会談した。

 ついにオイファは、圧倒的有利な立場にありながら、ほとんどの権利を放棄し、和平を受け入れただけでなく、撤退までをも申し出る。

 唯一の条件は、ク・ホリンを差し出すことだった。ク・ホリンの命を求めたのではなかった。なんと、オイファもク・ホリンに慕情を抱いたのだ。

 スカアに許せるはずはなかった。

 しかし、スカア軍は全滅寸前だったのだ。

 やむなく、スカアは、一夜限りの限定条件でク・ホリンを貸し出すことに同意する。

 ク・ホリンとオイファは結ばれたのだった。

 

 オイファは去り、ク・ホリンはスカアの元に戻った。

 スカアの傷は快方に向かっていた。

 これから、影の国の再建が始まろうとしていた。

 スカアは、ク・ホリンに影の国の後継者となって欲しいと考えていた。

 しかし、ク・ホリンは、旅立つ決心を固めるのだった。

 「世界は広い、俺はもっと見てみたい」

 これまでの体験や、オイファとの出会いは、ク・ホリンにもっと世間を知りたいという欲求をはぐくんだ。さらには、身に付けた武術を試したいという思いがク・ホリンの心を騒がした。

 しかし、何よりク・ホリンはまだ若かった。若さこそ、ク・ホリンを動かす最大の力だったのだ。

 ク・ホリンが影の国の国王になり、自分は大臣になれると大喜びしていたレーグだったが、ク・ホリンから旅立ちを告げられると

 「親分の行くところ、どこへでも付いて行きまっさ」と、大阪弁だとこうなるセリフを一言言っただけで、新たな旅に同行するのだった。

 

「 影の国の女王スカア編 第2部 おわり 」 

 

アルゴ号 参考資料
アルゴ号 参考資料

「 海神 マナナーン 編 」

 

 マナナーンの一族は、保守的な王族であった。

 そのため、政治は硬直化していた。政治の実権を握っているのは、年寄りの元老たちだった。かつて繁栄した時代をなつかしみ、今ある問題に眼を向けようとしないので、マナナーンの国力は衰退の一途をたどりつつあった。

 その中の異端児がマナナンジーである。

 王族の血筋を引く、王位継承者のひとりだった。

 その言動が、進歩的でありすぎるため、元老たちの反感をかい、ついには、反逆者としての汚名を着せられて、遠方の島に幽閉されていたこともあった。

 しかし、メイヴ女王によるケルティカ侵攻の開始によって、マナナーンにも危機が訪れたことにより、状況は変わった。

 元老たちは、政治を担当する実行力はないことを自覚していた。

 メイヴの侵攻は、自分たちでは防ぐことができない。そこで、マナナンジーに白羽の矢がたったのある。

 戦時の特別処置により、幽閉をとかれたマナナンジーは、、中央情報局に配属された。

 マナナンジーは、あらゆる制限なしで、すべてを裁量できた。肩書きは、情報局の補佐官だったが、マナナンジーの就任以降、国軍は事実上、マナナンジーの指揮下に入ったのである。

 

 マナナンジーは、まず、能力主義による組織の改革を進めた。

 一方で、装備の近代化にも着手した。

 天才的な戦略家のみならず、優れた発明家であり、デザイナーでもあったマナナンジーは、それまでの巨大で小回りのきかない大艦、大建築物主義でつくられてきた装備に代え、合理的で機動力のある装備を求めた。

 

 その実験艦となったアルゴ号に乗り込み、マナナンジーは、今日もどこかの海を走っているのであった。

 

 アルゴ号

 

 全長200メートル。全身銀色に輝く、スマートな船体を持つ快速艦。動力は、古代式原子力。

速力が武器なので、他の武器は軽装備。偵察巡洋艦ともいうべき艦種。

シンプルだが、SFメカっぽいデザイン。

 

 後に、ク・ホリンの乗った船が難破したとき、偶然、助けることになる。

 最初は敵だった二人の関係は、数奇な運命を経て、最後にはク・ホリンは、マナナンジーを兄のように想い、マナナンジーもク・ホリンを弟のように想うほどの親密な中になるのであった。

 

 マナナンジーは、ホロホロと呼ばれる、伝説の怪獣を捕獲するため、キリタチ島に向かっていた。

 ホロホロは、魚と鳥を合わせたような姿で、大きさは、マイクロバス程度。その姿の示す通り、海では魚、空では鳥の能力を持っていた。しかも、手なずければ馬のように主人の思うとおりになる。

 ホロホロは、優れた身体能力と、おとなしさと、賢さを兼ね備えた便利な怪獣だった。

 ただし、野生のホロホロは、気性の荒い、大変危険な怪獣だったので、捕獲作業は困難が予想された。

 無理をするには理由があった。

 マナナンジーは、このホロホロを訓練して船から飛ばせる飛行隊を編成できないかと考えていたのだ。

 マナナンジーの乗艦する、偵察巡洋艦アルゴ号は、資源や資料の収集を行うための格納庫と研究設備の他、地図作成のための測量装置なども持っていた。

 マナナーン海のほとんどの調査を終え、最後に残ったキリタチ島へ向かう途中、黒ドルイドの起こした嵐を察知したアルゴ号は、調査のため嵐の海域に向け進路を取った。

 その嵐は、黒ドルイドとク・ホリンの争いの結果、生じたものだった。

 

 戦いの神、スカア直伝の技を持つク・ホリンは、地上では強いが、海上では力が発揮できない。 黒ドルイドは、その弱点につけこんでク・ホリンとレーグにわなを仕掛け、窮地に追い込んだ。 難破した船から脱出を果たしたものの、海上を漂うだけのク・ホリンとレーグは、食料も水もない、危機的な状況にあった。

 そこに、マナナンジーのアルゴ号が現れた。

 瀕死の二人は、マナナンジーのアルゴ号に救われる。だが、メイヴ軍の兵士と間違えられたため、帰還するまで監禁されることになった。

 しばらくして二人は実は、知恵の木村のドルイドや、影の国のスカアの元で修行をしてきた戦士であることを知ると、マナナンジーの部下の副官怪力ヘーラクレスは、ク・ホリンとレーグを、ホロホロ調査団に加えることにした。

 とはいえ、ク・ホリンとレーグは、開放されたのではなかった。二人は、異民族の兵士である。そのため、危険な野生のホロホロの捕獲作業の先頭に立たされ、味方の危険を少なくするための盾にしようという魂胆だった。

 

 キリタチ島でのホロホロ捕獲作戦は、結局失敗に終わった。

 マナナンジーも一時危機に陥り、ク・ホリンの活躍で命をかろうじて救われる。

 ホロホロは、全部逃げてしまった上、ヘーラクレス副官をはじめ、負傷者を多く出してしまった。

 しかし、ク・ホリンとマナナンジー は、親密な中になった。

 ク・ホリンとレーグの疑いは晴れた。二人はメイヴ軍とは関係ない、ケルティカを武者修行中の旅人であることがわかったのだった。 

 

 マナナンジーは、ク・ホリンを希望する海岸まで送ることにした。

 途上、マナナーン本部から緊急信が入電する。

 マナナンジーの妹、エマーがメイヴ軍によってさらわれたというのである。

 さらったのは、ギガントをあやつるシルファクス将軍だった。

 知恵の木村での戦いで、ク・ホリンに敗れたシルファクス将軍は、汚名挽回にやっきとなっていたが、眼をつけたのがワイワイ島に来ていたエマーと皇族たちの急襲だった。

 ワイワイ島には、ヒトと呼ばれる、人間族の村があった。エマーは、人間の持つ、素朴さと賢さにひかれ、以前から教育と支援のため、仲間の皇族たちとともに人間の村を訪れていたのだった。 ワイワイ島は、神と人間が、同じ空間を共有する地上の楽園だったのだ。 

 ワイワイ島にひそかに接近した空中戦艦から、特殊降下部隊が舞い降りた。

 不意をつかれたため、マナナーンの護衛たちは倒され、エマーと皇族たちは捕虜となったのである。

 

 輸送機に載せられたエマーと皇族たちは、空中に待機していた空中戦艦ギガントに移され、メイヴ女王の待つ、コナハトへ向かっているという。

 位置は、マナナンジーやク・ホリンたちの比較的近くだった。

 マナナンジーは、アルゴ号を全速で走らせ、ギガントを追った。

 

 「船でどうやって空にいる仲間を救えるのか?」

 「ホロホロを使うのだ。ク・ホリン手伝ってくれ」

 

 マナナンジーの頼みを受けて、ク・ホリンは、わけもわからないまま救出の手伝いを引き受けることにした。

 

 ギガントが視界に入って来た。ギガントのスピードは思いのほか遅く、また、位置も良かった関係でアルゴ号はギガントに接触することに成功した。

 追っ手を心配する必要がないと思っているのか、ギガントは、あけぼのの薄明かりのさす上空で、星空を背景にしながらゆうゆうと飛行していた(実は、捕虜をメイヴ女王の結婚記念日の贈り物として届けようとしており、日程を調整するためにわざとスピードを遅くしていた)。 

 明け方を迎えたアルゴ号の甲板上の動きが騒がしくなった。

 同時に甲板の下の格納庫でも大騒ぎが始まった。

 甲板下格納庫に収容されていた、怪鳥魚ホロホロが引き出されてきたのだ。

 マナナンジーは、すでに3匹のホロホロを捕獲し、調教をほどこし戦闘に使えるよう、実用化していたのだった。

 格納庫で準備を終えたホロホロは、順番にエレベーターに載せられ甲板に上がってきた。それはまさに、空母の発進風景さながらだった。

 艦橋で指揮していたマナナンジーは、甲板上に3機のホロホロが並べられるとク・ホリンをともなって1番機に乗り込んだ。もちろん、レーグも一緒だった。怪力ヘーラクレスは怪我をおして2番機に、他のパイロットが3番機に乗り込んだ。

 朝日を浴びながら、3機は次々とアルゴ号から飛び立った。

 見事、艦上から発進に成功した救出隊。しかし、ホロホロ戦闘機は、これが最初の実戦だった。 果たして、ク・ホリンとマナナンジーは、仲間たちを救えるのか!?

 シルファクス将軍の捕虜となった、マナーたちの運命はいかに?

 

 マナナンジーは、ホロホロに搭乗者席を取り付けて、そこから自在に操縦できるような仕掛けをほどこしていた。

 ホロホロは、編隊を組んで、上昇を続けた。

 雲を抜けて、ようやく、ギガントに並んで飛べるようになった。

 ギガントの窓越しに、乗組員が騒ぎ出しているのが見えた。

 マナナンジーは、ギガントに乗り移るため、さらに接近させた。

 「ク・ホリン、飛び移るぞ」

 「先に行く」

 ク・ホリンは、得意のジャンプでホロホロを飛び出した。

 ギガントのドアが開き、一部の兵士たちがデッキに飛び出してきた。その集団の頭を飛び越し、あっという間にギガントの船内へと消えるク・ホリン。

 兵士たちが、ク・ホリンを追おうと、振り返ったその頭上に、影。

 今度は、ホロホロの巨大な脚だった。

 デッキにいた兵士たちは、けちらされ、ひっくり返ったところを、マナナンジーやヘーラクレスたちが通過した。

 

 結局、肉弾戦では、ク・ホリンにかなうものはいない。ケルティカで一番の武術の使い手、スカア直伝の技を炸裂させるク・ホリンを止められるものはいなかった。

 シルファクス将軍も敗北を認め、一番先頭の操縦室で、降伏する。

 マナーと皇族たちは、無事救われたのだった。

 ク・ホリンとマナーは、そのとき、初めて出会った。そして、お互い好意を持った。

 二人はこの後、幾多の出来事を経て、結ばれることになる。

 マナーは、生涯、ク・ホリンを愛し、連れそう妻となるのである。 

 だが、今2人は、そのことを知らない。 

 

 ギガントはすでに海岸線を超え、陸地の上空を飛行していた。

 マナナンジーは、協議により、ギガントの進路をマナナーンの国へと変更させた。

 マナーと皇族たちは、ホロホロに乗って、先にアルゴ号に移されることになった。

 ホロホロの定員の関係で、ク・ホリン、レーグ、マナナンジー、ヘーラクレスなどがギガントに残り、マナーと皇族たちとパイロットを乗せた3機のホロホロは、ギガントを離れた。

 マナナンジーも、ク・ホリンも、エンジニアとしての素質があった。

 ギガントの構造については、2人とも興味深いものがあった。

 ギガントは、シルファクス将軍が計画の中心になって、建造したものである。

 2人がギガントに興味を示したので、シルファクス将軍は、ギガントの内部を紹介してまわった。

 シルファクス将軍もエンジニアである。3人の話題は、いつしかエンジニアならではの会話になった。3人は敵味方を超えた打ち解けた関係になったかのようだった。それが、シルファクス将軍の狙いだったのだ。

 油断から、なんと、ク・ホリンが船外へと突き落とされてしまった!

 次の瞬間、マナナンジーと、怪力ヘーラクレス、さらに、レーグも、ギガントの兵士たちに取り囲まれ、捕虜となってしまった。

 攻守逆転。最大の危機。ギガントから、突き落とされてしまったク・ホリンの運命やいかに!!!

 

 つづく