黄泉の国から来た少女 不思議な少女 参考資料
黄泉の国から来た少女 不思議な少女 参考資料

※冒頭の場面※

 

 ホリン(地名)の海岸。

 漁から帰ったクランが、舟から降りると、セタンタ(幼少時代のク・ホリンの呼び名)がなにかに夢中になって遊んでいる姿に気づく。

 「セタンタ今帰った。手伝ってくれ」

 振り返るセタンタの手元に貝殻を組み合わせてつくられた、対称形をした見慣れないものがあった。

 「なんだそれは、また、何か不思議な道具をつくったみたいだな」

 「こうすると、面白い」

 セタンタの横に、舟の模型が置いてあった。そこに、もっと小さい貝殻でつくられたものが部品として取り付けられていた。それには、軸が通してあり、その軸にはゴムが付いていた。それこそ、ゴム動力でスクリューを回して進む、世界初の自立航行式の舟の模型そのものであった。

 しかし、クランにはセタンタが見せたものが何であるか、まだ、見当も付かないでいた。

 セタンタは、スクリューを指でまわしてゴムをねじり、スクリューがしばらく回転できるほどの力をためると、波打ち際に持って行って、沖に向かって手をはなした。

 舟の模型は、打ち寄せる波に逆らって、沖へと走って行った。

 「こりゃあ、おどろいた!なんであの板は勝手に走って行ったんだ。お前は魔法を使えるようになったのか?」

 「違う。魔法ない。お父さんでも、同じができる」セタンタは、幼少だったので、言葉はまだ十分ではなかった。

 「それからこれも」

 セタンタは、大き目の貝殻でつくったスクリューを、まだあっけにとられているクに見せた。

 「それも、水の上を走るのか?」

 セタンタは、海岸を駆け出した。そして、いきおいをつけて空中に投げつけた。

 スクリューは回転しながら大空高く飛び上がり、弧を描いてまたセタンタの手元に戻って来た。

 「すごい!これに槍を付けたら、何度でも使える武器になる!。セタンタ、もう一度やって見せてくれ」

 セタンタがスクリューを投げようと腕を高く持ち上げた瞬間、手元のスクリューがクローズアップ。

 輝く太陽と重なるスクリュー。2つが重なってケルトの文様のような形になる。

 

 テーマ音楽

 文様→方位を示す文様→ケルティカの地図と変化し、

 タイトル表示「 ケルトの王子 ク・ホリンの大冒険 」

 あと、ケルティカの地図の部分拡大を背景にテロップが続く。

 

 数年後。

 

 二人の住む漁師小屋。

 夕食の準備を手伝うセタンタ。わずか数年で、青年の直前まで成長している。

 女手のない生活で身に付けたせいか、手馴れた手つきではつらつとして、家事をこなしている。

壁にスクリューがかけてある。タイトルで使われたスクリューである。もう、くたびれている。画面がパン(移動)すると、形の違う、ブーメランがたくさんかけてある。いろんなバリエーションがあり、進化しているのが見て取れる。

 さらに、何に使うのかわからないが、いろんな道具類がそこらじゅうに転がっている。部屋の一角は、さながら、実験室か、古道具屋のおもむきである。

 弱々しい姿でベッドに横たわりながら壁を眺めていたクランが、感心して言う。

 「まだ小さかった頃のお前が、ブーメランなるものを発明してわしに見せてくれたときには、驚いたが、ほんの数年前のことだ。わずかな時間で、お前はりっぱになったもんだ。お前は、本当に変わりものだった。武術にしてもそうだ。栄光の戦士と言われたわしの技をすぐに覚えたかと思うと、あっという間にわし以上の使い手になった。お前と住んでいるとまったく驚かされることが多かったよ」

 けげんな表情をして振り返るセタンタ。

 「ん、どうした?」と、クラン。

 「お父さん。なぜ、終わったみたいな言い方をするんだ?」

 「何か、気になる物言いをしたかい?いや、気づかなかった。

 ただ、お父さんはほめたいんだよお前のことを。お前は今にえらい人間になるかもしれん。いや、きっとなるに違いない。変わっていると言うのは、そう言うことだ。あらためてそう感じることができて、お父さんは誇らしい気持ちだ」

 死期の近づくのを感じて、クランはしみじみ語った。

 

 クランは、スカアの改心の術によって、ク・ホリンを育てるにふさわしい、優しさとたくましさを兼ね備えた養父となった。

 だが、それは、それまで仕えていた、メイヴ女王に対する反逆の生き方であった。

 メイヴ女王軍の戦士となったとき、クランは、生涯仕えるというゲッシュ(誓い)を立てていた。そのゲッシュに背いた生き方をしたため、この数年で、寿命を使い果たしてしまったのだ。

 ケルティカの世界では、ゲッシュの意味は、大きかった。一度立てた誓いを破る代償は大きく、命でつぐわなければならないのだ。

 だが、クランは、セタンタにはそのことを知らせずにいた。今の体調不良も、一時的なものと説明していた。

 

 ある朝。

 クランが、セタンタを枕元に呼んで言った。

 「わしの頼みを聞いてほしい。体の具合が良くないので、薬になる薬草をとってきて欲しい。それは、遠く離れた地にある。だから、旅支度をして、すぐ出発してくれないか」

 急速に体が弱わっていた父の姿を心配していたセタンタは、直ちに言葉に従い、家を後にするのだった。

 ところが、家を出て、わずかも行かないところで、背後に異変を感じたセタンタが振り返ると意外な光景が眼に入った。

 

 家と自分の途中の海岸に一艘の見慣れない船が到着していた。

 なんと、その船上に床から起きられないはずの父の姿があった。横には、誰か正体不明のものが付き添っていた。

 とっさに、怪しいものに父が連れ去られると察知したセタンタ。駈け寄ろうとすると、父が制した。

 「愛する息子よ。お別れのときが来た。お前はこれから、一人で生きて行かねばならぬ。困難も多かろう、だが、幸いお前には知恵も勇気も力もある。どんな困難をも打ち勝かす、たくましい生命力がある。父は、すばらしい若者になったお前を見届けることができて幸せだ。これから黄泉の世界に旅立ち、お前の行く末を見守ろう」

 「何を言ってるのかわからない!お父さん行かないで!」

 しかし、セタンタの脚は、地に吸い付いたように動かない。

 船は岸をはなれた。

 「息子よ、これから、おまえはク・ホリンと名のるが良い。さらばじゃ」

 霞と共に船の姿は消えた。

 そのとたん、体が動くようになったク・ホリン(セタンタを改名)。

 急ぎ家にとって帰し、自分の舟を出して父を追おうとする。

 そのとき、怪しい気配を感じて、武器を手にするク・ホリン。

 ク・ホリンの前に立っていたのは、見知らぬ少女だった。

 「おまえはさっきの船の仲間だな。父はどこだ、この舟にのって父の所へ連れて行くんだ」

 興奮するク・ホリン。だが、目の前に居たはずの少女はいない。

 後ろから突然声がした。

 「ほんとうに連れて行っていいの?」そう言って不気味に笑い出す少女。

 おどろくほどの速さで背後を取られたク・ホリンは、振り返りざま背中につけていた武器のブーメランを抜くと横一閃に振りぬいた。

 手ごたえはなく空振りである。自分の早業に自信のあったク・ホリンは、技をかわされたことにショックを受ける。

 危険な敵であることを瞬間的に感じたク・ホリンは、消えた少女を探すが、あたりに居ない。

 「どこだ!姿を現せ」

 言い終わるより早く少女は目の前にいた。

 だが、ブーメランを投げ下ろそうと身構えた姿のまま、ク・ホリンは動くことができなかった。 意識はあるが、時間が止まったような状態だった。ク・ホリンは、少女に翻弄されるがままだった。

 少女は、ク・ホリンと向かい合いの状態でク・ホリンの胸に片手を置き、目と鼻の先でじっくりク・ホリンを観察した。

 「この手をもう少し前に出せば、あんたの心臓をつかむことができるわ。そうすれば、望みどおり、お父さんのところへ行くことができるのよ。そうして欲しい?」

 ク・ホリンの額から一筋の汗が流れた。

 少女はク・ホリンの眼を凝視した。

 緊張の間合いが過ぎ、少女の表情は和らいだ。

 先ほどとはうって変わって穏やかで美しい少女の顔つきに変わって言った。

 「きれいな眼。いいわ、今度だけは見逃してあげる。まだまだ時間はたっぷりあるもの。それに、あんたが、この世界でどんなことをするのか、もう少し見てみたくなったの」

 少女の姿は消え、笑い声だけがこだまするのだった。

 

 霧のかかる海上。

 漂う小さなバスケットの中に眠る小さな赤ん坊。

 やがて、砂場の広がるどこかの海岸に流れついた。

 上空をカラスの群れが舞っている。

 バスケットの周りには、すでに舞い降りたカラスたちが集まっていた。

 いっせいに飛び立つカラスたち。

 クランが現れのだ。メイヴ軍の兵士だった頃の荒々しい姿だった。

 バスケットの中を確認したあと、腰のサーベルを抜く。

 非情にもバスケットごと、一突きしようと言うのか。

 「だれだ!」

 全身黒ずくめの女の姿。影の国の女王スカアだった。

 「メイヴの犬よ。本来のこころを取り戻すのだ」

 スカアの技のひとつ、改心の術だった。

 クランの性格は、一変していた。

 「お前は、その子供の親となって独り立ちするまで育てるのだ。行くが良い」

 子供を抱いて立ち去るクラン。

 肩に止まっていたカラスに向かって独り言をもらすスカア。

 「あの赤ん坊になんの関わりなどあるものか。ただ、ちょっとメイヴをからかってやりたくなったのだ。私の気まぐれの虫が出たまでのこと」

 スカアは消えた。

 カラスたちは、飛び立ち、上空を舞って一斉にスカアを称える合唱をはじめた。

 カラスたちの声と入れ替わるようにク・ホリンを呼ぶ声が聞こえ始め、やがて、その声だけになる。

 父となって育ててくれたクランが現れる。船上の人となって、黄泉の国に旅立とうとしていた。

 「セタンタよ、良く聞くのだ。お前は、これからク・ホリンと名のるが良い。さあ、旅立て。わしが死ぬときスカアの術は解ける。これまで、わし達は、スカアの術によって隠されていたのだ。 だが、術は解ける。メイヴはお前の居所をつきとめ、命を狙いにきっと現れる。行け、行くのだ」

 「どこへ、どこへ行けばいいの?メイヴってだれのこと?なぜ、なぜ、メイヴに狙われるの?」

 叫ぶようにクに問いかけるク・ホリン。消え去りながら、必死に答えようとするクラン。

 「スカアの国に向かうのだ。そこで強くなって、メイヴに立ち向かうのだ。行くのだク・ホリン、さらば、さらば…… 」

 「お父さん!」

 叫んで駈け寄ろうとするク・ホリン。

 いきなり目の前に少女が現れる。

 「私が連れて行ってあげるわ」

 笑い声が響いてク・ホリンを恐怖に陥れる。

 少女は手にしたサーベルで、容赦なくク・ホリンの胸を突いた。  

 あっと叫んで目覚めるク・ホリン。汗まみれである。

 「夢だったのか…… いや、そうじゃない。お父さんは、もういない。俺はどうすればいいんだこれから」

 

 メイヴの追跡をかわす必要から、思い出深い漁師小屋を燃やし、旅に出るク・ホリン。

 ここから、ケルティカをめぐる、ク・ホリンの旅が始まるのだった。

 

 

※スカア編 第2部※

 

 ク・ホリンの派遣された場所は、戦闘の起こらない地域に限定されていた。

 スカアは、腹心の部下であるフクシンをよび、事情を話してク・ホリンを戦場からなるべく遠ざけた場所に連れて行くよう、命じた。

 ク・ホリンにもついに出撃命令が下った。フクシン率いる選抜隊が編成され、ク・ホリン、レーグと兵たちは出発した。向かった先は、主戦場とは正反対の場所だった。

 現地に到着してみると、谷を挟んだ向かい側の高原に、オイファの軍勢が百万もの兵を率いて駐留しているのが見えた。

 対するク・ホリンの属するフクシン軍は、わずか数十名ほどだった。

 それでも、フクシン軍は、キャンプをはって、大軍と対峙することになった。

 力の差は歴然としていた。しかし、なぜか、オイファ軍は高原に陣取ったまま、動こうとしなかった。

 フクシン軍は、向かい合ったまま、その場に貼り付けの状態となった。

 そのまま、何日も過ぎていった。

 ク・ホリンは、その状況に不自然さを感じはじめていた。

 そこで、レーグと2人だけでこっそりオイファ軍の陣に潜入することにした。

 驚いたことに、オイファ軍は実態のない、虚像だけの軍団だった。まるで、3Dの映像のような

有様に、あきれる2人だった。

 2人の報告を聞いたフクシンは、意外にも表情ひとつ変えずに言った。

 「オイファに付いている黒ドルイドの術だ。確かに今は虚像だが、我々が帰ったと知ると一瞬にして実像に変え、ここから攻めるつもりなのだ。だから、我々は監視を続けなければいけないのだ」

 「監視だけなら、他のもので十分だ。俺たちは、戦場で戦いたい」

 「ハハハ…強くなったとは言え、おまえはまだまだ少年だ。戦争というものを知らない。スカア様は、全体を見て采配される。みな、それぞれの与えられた役割を果たすとき、スカア軍は一番強い力を発揮できるのだ。

 もし、ここが手薄になって、くずされたらどうする。たとえ、わずかな兵士しかいなくても、我々が居る限り、黒ドルイドは、安易にここから進入しようとは思わなくなる。つまり、100万の兵を食い止めているのと同じなのだ」

 「スカアにも、虚像の軍を作り出せる術はあるだろう。虚像には虚像で十分のはずだ。それに、お前の言うとおりだとしても、俺たち2人が抜けるくらい、ここの戦況には関係ないだろう」

 「ばかなことを言うな。私とお前たちを除いた他の連中を見ればわかるだろう。よろいを付けていても、みな平民だ。料理や洗濯はできても、刀の使い方など知らぬものたちだ。

 事実上、ここには我々3人しかいないのと同じなのだ。だが、この3人なら、たとえ相手が100万の兵であっても、数日間はもちこたえることができる。それだけ時間が稼げれば、援軍の手配もできるのだ。

 もし、お前たちが抜けて私一人になったら、いくら、アマゾネスのチーフとは言え、一日とはもたんだろう。スカア様は、3人は100万の兵に匹敵するとお考えになられているのだ。この光栄を考えれば、私は涙にくれそうになる」

 ク・ホリンには、納得できない理屈だったが、他に判断する情報もない以上、待機を続ける他なかった。

 

 実際の戦況は、スカアに苦しかった。

 各地で敗戦が続き、スカア軍は、後退を続けていた。

 ついに、スカアが最前線で戦わなければならなくなった。

 スカアが、№1の部下と戦場を視察しているさなか、突然、№1が倒れた。スカアが名を呼んだとき、すでに№1はこときれていた。

 スカアめがけて飛んできた槍を察知し、№1はとっさに自分の体を投げ打ってスカアを守ったのだった。

 スカアがこれほどの隙を敵に見せたことはなかった。やはり、スカアは乱れていたのだ。

 現れたのは、オイファの右腕と言われる、オイファ軍最強の戦士の一人、ミギウデーだった。乱れているとはいえ、スカアに必殺の槍をむけることができたのは、オイファ軍の中でも一番の武術者だったからだった。

 「ああ、腕がなる。眼前の相手がスカアであるとは、なんと幸運のことよ。ケルティカ最強とよばれたスカアもここで散るか」

 「おまえのようなものに、見くびられるようでは、まだまだ私も修行が足りないようだ」

 2人の刀が触れた瞬間、閃光が走った。凍りついた景色の中で、一人が倒れこんだ。倒れる前から、すでに絶命していたミギウデーだった。

 だが、スカアも右腕に重症を負っていた。

 戦いの場で、初めて受けた傷だった。

 

 つづく